「たかがカレー、されどカレー」
日本人の国民食の王座に永きに渡って君臨しているカレーライス。
市販されているルーを使えば誰でもどこでも(キャンプ場でも定番ですね)作れて、しかも栄養豊富で美味しいから、子供の頃は給食のカレーの日を何日も前から楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。また夏場など食欲のわかない時期にはうってつけの料理ですね。
ついでに言えば、普段料理などをしない男の人がキッチンに立ち、それどころかその具材の買い出しから率先してする唯一の料理はカレーでしょう。
それほど男性のカレーに対する思いは深く強い。
ところが、そうやって普段料理をしない人が単に自分が食べたいカレーのイメージだけで色んな食材を買ってきて作ると大体不味くなります。
また飲食店のまかないでもカレーはよくありますが、「美味しい」と口をついて出るほどのカレーが出てくることは同じ理由でほとんどなく、若手が作ると時間と原価ばかりかかって、大抵の場合、その技術や経験への信頼が大幅に損なわれることになる事がほとんどです。
市販や業務用のカレールーは、極端な話、適量のお湯で溶かせばそれだけで美味しいはずなのですけどね。
大抵場合不味くなる原因は、野菜(特に色付の)を入れて煮込んでしまうことに起因しているように思われます。
確かにたくさんのお肉と色んな野菜をいっぱい食べたいですよね。でもそれは絶対に煮込んではいけません。全部台無しになります。
自分が食べたいと思った食材を用意したら、肉は塩胡椒して表面だけ焼き、野菜は生で食べられないものはそれぞれ茹でるなりして置いておきます。
製品の外装に書いてある分量よりやや少なめの水を鍋にいれて沸かしたら火を止め、固形ルーを砕いて入れ、トロミがつくまでよくかき混ぜます。ウスターソースやケチャップ、しょうゆ、チリソース、タバスコなどを入れたい方は、ここで少量ずつ入れてよく混ぜて調整してください。この手のソース・シチュー料理は基本的に味を重ね塗りしていくようなものですので、この手の調味料を最後に入れると、その味が前面に出すぎて安っぽくなってしまいます。
さて、一旦室温程度まで冷ましたら、肉を入れてゆっくりと15分くらいかけて時々混ぜながら加熱します。湯気が立ってきたら食べ頃の温度で肉にも柔らかく火が通っていますので、器に盛って野菜を添えたら出来上がりです。水ではなくて濃度のあるソースで肉に火を入れると旨味が肉に保たれたままになりますので口の中に甘味が広がります。
でも、よく見るとメーカーの箱には肉と玉ねぎと人参、ジャガイモを水で煮込むと書いてありますね。ポトフのように素材の旨味を愉しむスープを作るわけではないので、が、水で肉を煮ると味が出てしまった上に固くなりますので表面だけ焼き色をつけたら一旦出しておいた方が美味しくなります(豚肉などをトロトロになるまで煮込むには1時間半くらいがかかります)。
また人参とジャガイモも別に火入れした方がいいでしょう。
市販ルーのカレーに入れていい野菜はピーマンとインゲンだけです。それもほんの少しの時間、温めて香りを立たせる程度です。どんな野菜でも煮込むと味も香りも溶け出してカレーの風味を濁して不味くなります。ピーマンとインゲンの香りはカレーの香りを引き立てますから1番のオススメです。
ジャガイモは溶け出すと味がボケてぼったりしますので、電子レンジで火入れし、一口サイズに切ったらルーを入れるのと同時くらいに入れれば十分でしょう。
「飴色になるまで炒めた玉ねぎ」はすでに固形ルーの中に入っていますので無用です。玉ねぎを入れたい方は大き目のくし切りにして肉を焼くときに一緒にざっと炒めておいて、肉を再投入するときに一緒入れれば(ピーマンとインゲンもこのとき)甘味と辛味と水分を含んだ玉ねぎを楽しめます。
参考までに当店のカレーの作り方を書いておきます。基本的にはインドカレーですが、バターと小麦粉で濃度をつけた欧風カレーです。
鍋でひまわり油を熱し、ホールのカルダモン、クミンシード、クローブスの香りを出します。ソテードオニオンを入れ焦げ茶色になるまで2時間くらい炒めます。生姜、青唐辛子をいれてさらにいためて香りを出したら、ダイストマトをいれ、水分が無くなるまで炒めます。
パウダーのクミン、コリアンダー、パプリカ、ターメリック、カイエンヌペッパーと小麦粉を混ぜ合わせていれ粉気やダマがなくなるまで練るようにして弱火で炒めます。
バターを入れてよくまぜあわせたらブイヨンを1カップくらいずつ入れて加熱しながら伸ばして行き、最初に入れたホールスパイスが浮いてくるので取り出します。
塩で味を調えてソースは完成。冷まします。
下味をした肉を大き目に切り、鶏は皮目を下にしてざっくり焼きます。肉とソースを一人前ずつ計量したら真空パックして、湯煎で温めた後、器に移し、小口切りにした獅子唐をトッピングしたら電子レンジでちょっとだけ加熱して香りを立たせて出来上がりです。
※「料理人の腕とセンスがすべて出る」という信条から、実は一番情熱を注いでいるのがカレーで、毎年作っていますが、イタリアン=パスタのイメージのせいか、なかなか売れないので、翌年にはついにごはんをなしにして肉料理として提供しました。
今年は自家製パンとサラダ付で提供しています。